日本のB2B購買の現場で迷いやすい論点を、価格・納期・MOQ・品質・リスクの5軸で可視化します。2024年の実勢データと製造・印刷・包装の原価内訳を前提に、案件タイプ別に「中国/タイ」の最適地を明快に示します。二国の得意領域を踏まえ、失注しない発注設計まで落とし込みます。
小ロット・短納期・一体包装なら中国、ツアー級キャストPUの一貫性ならタイが有利。中国は5–15%の原価優位+小さめMOQ、タイは高単価帯でも安定品質。最適解は二産地併用です。
結論:どちらが有利?(用途別の最適解)
小ロット・短納期・一体包装でスピード重視なら中国、ツアー級のキャストPUで一貫性重視ならタイが強みです。中国は製造・印刷・包装で5–15%の原価優位と小さめMOQ、タイは高単価帯でも安定品質。最適解は二産地併用です。
- 方法:用途→品質水準→数量/面数→包装仕様→納期の順で要件定義
- MOQ:中国は1,000球(練習500可)中心、タイは3,000–10,000球が一般的
- 納期:中国2ピース12–20日、タイ2ピース20–30日。PUは二国とも30–60日
- 費用:中国は原価5–15%優位+印刷/包装一体で総額を圧縮しやすい
判断早見表(用途×推奨産地)
短時間で意思決定できるよう、用途ごとの推奨を整理します。
| 用途/狙い | 推奨産地 | 主理由 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 販促・練習用(2ピース/Surlyn) | 中国 | 原価が5–15%低く、印刷/包装一体で短納期 | 祝日・繁忙期の前倒し手配、色差/ロゴ校正の迅速化 |
| ツアー級/上位SKU(3ピース/PU) | タイ | キャストPUの一貫性、返修率が低い | MOQ3,000–10,000、旺季の枠確保が重要 |
| 多SKU・短納期・ギフトパッケージ | 中国 | 小ロット対応・多SKUに強く、スリーブ/ギフト箱の柔軟対応 | 校了基準を統一、加急費(+5–15%)の事前合意 |
| 年度大型案件(安定供給/長約) | タイ | 排産の安定、品質ぶれが小さい | 価格は高め。旺季は交期長化。相見積と分納でTCO最適化 |
| リスク分散(遅延・欠品回避) | 併用 | 二国デュアルで遅延・品質リスクを相互補完 | 仕様・検査・版下ルールを共通化 |
想定読者(販促/自社SKU/ツアー級)
購買・MD、販促担当、プライベートブランドのSKU開発、スポーツ量販/ECのバイヤー。意思決定は価格×納期×MOQ×品質×ブランドリスクのバランス取りがポイントです。
✔ 正しい理解 — 「安い=中国、品質=タイ」の単純図式は用途依存です
2ピース(アイオノマー)は二国で差が小さく、中国は包装・印刷一体で総額が下がりやすいです。3ピース(キャストPU)はタイが一貫性で優位ですが、高配ODMの中国が条件次第で対抗可能です。
✘ よくある誤解 — どの案件でも「品質はタイが絶対に上」
量産条件・QA運用・塗装仕様次第です。特に2ピースでは外観・初速・真球度の量産安定は中国でも成熟しています。
価格・コスト構造の差(5–15%ギャップの中身)
同一材料・電力前提で、中国は2ピース/3ピースとも製造原価が約5–15%低めです。印刷・包装は中国が柔軟かつ安価。タイは高単価帯で品質溢価を吸収できる案件に強み。総額は数量・面数・包装仕様で変動するため、内訳の見える化が必須です。
2ピース原価比較(芯/カバー/人件/エネルギー)
2ピースでは、芯ゴム・カバー・人件費の差がトータルに効きます。
| 成本項目 | タイ (JPY/球) | 中国 (JPY/球) | ポイント |
|---|---|---|---|
| 芯ゴム ~38g(BR+ZDA等) | 16–22 | 15–20 | 同等配合なら中国がわずかに低コスト |
| カバー6g(アイオノマー) | 8–12 | 7–11 | 樹脂調達と歩留で差が出やすい |
| 塗装(下塗/クリア) | 3–5 | 3–5 | 規格同一なら差は小さい |
| エネルギー(0.03kWh) | 0.6 | 0.5 | |
| 人工(~0.5分/球) | 3–6 | 2–5 | 製造賃金差とライン稼働率 |
| 金型・償却 | 1–2 | 1–2 | |
| 検査・ロス | 1–2 | 1–2 | |
| 製造小計 | 32–49 | 30–44 | 中国が5–15%程度低い傾向 |
3ピースPU原価比較(キャストPU/塗装/QA)
キャストPUの一貫性確保に要するコストで、タイは経験・工法の蓄積が優位です。
| 成本項目 | タイ (JPY/球) | 中国 (JPY/球) | ポイント |
|---|---|---|---|
| 芯/中間層 ~40g | 18–24 | 17–23 | |
| PUカバー5–6g | 9–13 | 8–12 | 原料10–14USD/kg前提 |
| 塗装体系 | 5–8 | 4–7 | 表面品質と耐摩耗の規格次第 |
| エネルギー(0.05kWh) | 0.9 | 0.8 | |
| 人工(工程多め) | 5–9 | 4–8 | |
| 治工具償却 | 2–4 | 2–4 | |
| 検査・等級分け | 2–4 | 2–4 | |
| 製造小計 | 42–62 | 37–58 | PUでも中国が総じて低コスト |
印刷・包装単価差とスリーブ/ギフト影響
ロゴ印刷・スリーブ・ギフト箱まで含めると、総額の差はさらに開きます。
| 項目 | タイ (JPY/球) | 中国 (JPY/球) | 備考 |
|---|---|---|---|
| ロゴ移印・単色片面 | 2–3 | 1.5–2.5 | 8ステーション油杯機 |
| 両面2色(一般的) | ~5–8 | ~4–7 | 面数で時間当たりスループット変動 |
| スリーブ/白箱(12入) | 10–15 | 8–13 | 白カード/内トレー |
| PET透明箱(2/3入) | 15–25 | 12–22 | PET折箱 |
| ギフト箱(磁石/インサート) | 40–80 | 35–70 | 意匠・構造で単価差が拡大 |
✔ 正しい理解 — 印刷コストは工場・面数・色数・治具で変わります
単色片面と両面2色ではライン稼働率が異なり、段取り替えや版の摺合せでロスが発生します。中国は多品種・小ロット対応の段取り最適化が進んでおり、総額で有利になりやすいです。
✘ よくある誤解 — 「印刷単価はどこでも同じ」
スリーブやギフト箱まで含める一式見積と、ボールのみの見積は比較基準が異なります。内訳の開示と校了基準の共有が重要です。
納期・MOQ・繁忙期(カレンダーの実相)
中国は2ピースで12–20日・MOQ1,000球(練習500可)が取りやすく、タイは20–30日・MOQ3,000–10,000が標準です。3ピースPUは二国とも30–60日。繁忙期はタイQ1–Q2、中国Q2–Q3で、前倒し予約・分納・加急枠の設計が効果的です。
加急可否と費用(中:+5–15%、泰:+10–20%)
加急費の相場感を前提に、現実的な短縮幅を見積ります。
| 方式/国 | 標準納期 | MOQ | 加急費率 | 短縮幅の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 2ピース/中国 | 12–20日 | 1,000(練習500可) | +5–15% | 2–5日 |
| 2ピース/タイ | 20–30日 | 3,000–10,000 | +10–20% | 3–6日 |
| 3ピースPU/中国 | 30–50日 | 1,000–3,000 | +5–15% | 3–7日 |
| 3ピースPU/タイ | 35–60日 | 3,000–10,000 | +10–20% | 4–8日 |
分納・前倒し発注の設計
MOQや納期の制約を緩和するため、繁忙期前に版・治具・校了を固め、前倒し半量→分納を設計します。海外倉庫・相乗り活用で費用とリードタイムを平準化します。
MOQ未満の対処(塗装/相乗り/分納)
方法:塗装色の統一、印刷相乗り、分納化で実効MOQを下げます。費用は色替/版替ロス低減で最適化。納期は校了スピードが決め手です。
✔ 正しい理解 — 小ロット対応は「条件付き」で可能です
版の共用、白箱の規格化、色替え回数の制限、分納化など条件設計により、MOQ未満でも実行可能なケースがあります。交期短縮は校了の早さで決まります。
✘ よくある誤解 — 「どの時期でも小ロットを最短でできる」
繁忙期は段取り替え枠が限られます。旺季(タイQ1–Q2/中国Q2–Q3)は、早期の枠確保と分納計画が不可欠です。
品質・一貫性・リスク(PUとSurlynの視点)
2ピースは二国で差が小さく、中国も外観・真球度・初速の量産安定が成熟。3ピースPUはタイがキャストPUの一貫性と返修率で優勢。中国の高配ODMで対抗可能だが、一般にタイの安定感が一歩先。供給長約による産能確保も品質維持に寄与します。
表面塗装/耐摩耗/外観検査の差
品質を安定させるには、塗膜硬度・黄変抵抗・スクラッチ耐性の最適化と、外観検査基準票の共有が有効です。方法はサンプル合意→量産立会い→出荷検査の三段QCでぶれを抑えることです。
返修率・歩留・QCゲート(代表例)
| 品質項目 | タイの傾向 | 中国の傾向 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| キャストPU一貫性 | 強 | 中〜強 | タイ優位。中国は工場選定で改善幅あり |
| 塗装耐摩耗 | 強 | 中〜強 | 塗膜仕様と乾燥条件で調整可能 |
| 外観(ロゴ滲み/欠け) | 低頻度 | 低〜中 | 版・治具の共有と試刷で抑制 |
| 黄変/白度 | 低 | 低〜中 | クリア塗装と保管条件の管理 |
黄変/塗膜/ロゴ精度の管理点
方法:温湿度・UVの保管条件、塗膜硬度と密着性のバランス、版下・色票・DIC/Pantoneの整合。初回量産前にPPAP的パッケージで合意形成。
市場データで見る日中泰(輸出・対日輸入)
2024年の輸出実績は、中国が2.92億球・1.168億USD・平均0.40USD/球、タイが6,860万球・1.75億USD・平均2.55USD/球。日本の輸入は数量で中国が優位、単価でタイが優位という補完構造が継続しています。案件設計はこの需給構図を前提にすべきです。
対日輸入(数量/金額)の意味
練習・2ピースは中国系が量を支え、PU高単価帯はタイ系が担う構図です。自社SKUのポートフォリオを数量×単価で設計し、在庫回転と粗利率を最適化しましょう。
価格帯別の供給ポジション
価格帯の棲み分けを理解すると、SKUの役割が明確になります。
輸出サマリー(2024年)
| 国/地域 | 数量(球) | 輸出額(USD) | 平均単価(USD/球) | 換算額(JPY) |
|---|---|---|---|---|
| 中国 | 292,000,000 | 116,800,000 | 0.40 | 17,678,030,400 |
| タイ | 68,600,000 | 175,000,000 | 2.551 | 26,486,775,000 |
日本の輸入(2024年)
| 供給元 → 日本 | 数量(球) | 金額(USD) | 換算額(JPY) |
|---|---|---|---|
| タイ → 日本 | 10,100,000 | 24,800,000 | 3,753,554,400 |
| 中国 → 日本 | 16,000,000 | 9,200,000 | 1,392,447,600 |
✔ 正しい理解 — 数量の多寡と品質の良し悪しは直結しません
数量は価格帯・用途構成の反映であり、品質は工程・規格・QC運用で決まります。2ピースでは二国の差は小さく、3ピースPUはタイが安定しやすいというのが実勢です。
✘ よくある誤解 — 「数量が多い=品質が低い」
数量の大きさは需要と価格レンジの結果であり、品質評価とは別物です。評価は品目ごとの規格と検査結果で行います。
どちらを選ぶ?シナリオ別の実務判断
タイ=ツアー級PU/旗艦SKU/ブランド背書/長期安定、中国=小ロット対応/多SKU/短納期/予算重視/一体包装。最適は二国分担で、2ピース/販促は中国、3ピースPU/上位はタイ。分納・相見積でTCOを下げ、遅延と欠品リスクを同時に抑えます。
ケース1(3,000球・練習販促)=中国
2ピース×白箱/スリーブで短納期+小ロット対応を実現。校了を前倒しし、試刷→本刷のリードタイムを短縮します。
ケース2(3ピースPU・定番年契)=タイ
キャストPUの一貫性と年間枠の安定を優先。旺季前の年契で産能確保し、返修率とブランドリスクを低減します。
ケース3(発売遅延回避:二産地並行)
発売日厳守の大型SKUは、設計統一→二国並行立上げでレッドボタンを用意。どちらかの遅延をもう一方で吸収します。
実装ロードマップ(失注しない調達手順)
Q4に翌春向けを先出し予約し、中国で販促SKUを短納期で起動、タイでPU上位SKUを年契で確保。分納と加急枠を事前合意し、印刷・包装を含む一括のQA基準を共有。相乗り・在庫調整を織り込み、機会損失と物流リスクを抑えます。
RFP項目テンプレ(納期/MOQ/QA/加急)
調達要件のブレを防ぐため、RFPに下記を明記します。
| 項目 | 要件例 | メモ |
|---|---|---|
| 仕様/規格 | 2ピース/3ピース、カバー材、硬度、初速、外観基準 | 図面・版下・色票を添付 |
| 印刷/包装 | 面数/色数、位置許容、箱仕様、JAN/ラベル | 一式対応の可否、予備数 |
| 納期/分納 | 希望日、分納計画(例:50/50)、検査日程 | 加急枠と費用の上限 |
| MOQ/ロット | MOQ、相乗り条件、色替回数 | 多SKUの束ね方 |
| QA/是正 | 受入基準、抜取水準、是正リードタイム | 代替/再生産の条件 |
契約条項(分納/歩留/是正/ペナルティ)
受入判定・是正の手順、分納スケジュール、歩留れ目標、遅延ペナルティ、版・金型の帰属を明確に。写真・動画検査のエビデンス運用も取り決めます。
移管・デュアルソーシング手順
初回は片側→並行→本番の三段階で移管。仕様・版下・QC票を共通化し、治具互換を取っておくと切替時間を短縮できます。
FAQ
2ピースはどちらが安い?
2ピースは中国が総額で5–15%有利になりやすいです。
原価(芯・カバー・人件)に加え、費用面では印刷や包装の一体対応で段取りロスを抑えやすいのが要因です。タイでも標準仕様なら競争力はありますが、MOQや繁忙期の納期枠取りで実質コストが膨らむことがあります。最終判断は数量・面数・包装仕様まで含めた総額比較が基本です。
3ピースPUはどちらが安定?
キャストPUの一貫性と返修率の低さでタイが優位です。
タイはトップブランド由来の工程設計とQC文化が根付いており、塗装・固化の安定性が高い傾向です。中国も高配ODMで対抗可能ですが、工場選定のバラつきがあり、PPAP的な事前承認と量産立会いの徹底が成功確率を上げます。
最小ロットは?
中国は1,000球(練習500可)目安、タイは3,000–10,000球が一般的です。
MOQは版共用・色替制限・分納・相乗りなど条件設計が鍵です。タイでも例外はありますが、旺季の枠圧迫で新規小ロットは通りにくい局面が生じます。早期の校了と前倒し予約が納期と費用の両面で有効です。
納期短縮のコツは?
加急枠の事前合意、分納、校了前倒しの三点セットが最短への近道です。
中国は+5–15%、タイは+10–20%の加急費で数日短縮が狙えます。並行して分納計画を作り、箱・ラベルなど印刷物も先行手配します。承認待ちで止まらないよう、写真/動画でのリモート検査を活用しましょう。
印刷やパッケージを含む一式対応は?
中国は印刷・包装までの一体対応が速く、総リードタイムが短くなります。
ボール印刷、スリーブ/白箱、ギフト箱までの垂直統合が進んでおり、段取り替えのロスを低減できます。タイでも可能ですが、長期安定の旗艦SKUでは別ライン管理となることが多く、スケジュールの余裕を持たせるのが安全です。
旺季はいつ?
タイはQ1–Q2、中国はQ2–Q3が繁忙期で、早期の枠取りが重要です。
米欧春夏シーズンの前倒し生産がタイのQ1–Q2に集中し、中国は外販と年末ギフト向けでQ2–Q3が混み合います。繁忙期は段取り替えが難しく、加急も取りづらいため、Q4の先物予約が効果的です。
品質保証と是正は?
QCゲートの定義、受入基準、是正リードタイムを契約に明記するのが要諦です。
版下・色票・外観判定表の共有、初回量産の立会い、写真・動画のエビデンス運用を制度化します。是正は代替・再生産・値引の優先順位とトリガーを事前合意し、歩留目標とペナルティもセットで規定します。
二国併用はコスト増?
在庫・遅延・品質の総合リスクを下げ、トータル損失を抑えやすくなります。
単価だけを見ると片寄せが安そうに見えますが、発売遅延や欠品による逸失利益が上回るケースが多いです。設計共通化と治具互換を前提に、販売ピークへ向けた分納と在庫ポジションで全体最適を図りましょう。
まとめ
価格と納期・MOQを起点にすると、2ピースや多SKU・短納期・一体包装では中国が有利で、3ピースPUやツアー級の一貫性重視ではタイが堅実です。
意思決定は方法の順序(用途→品質水準→数量/面数→包装仕様→納期)を守り、総額(原価+印刷+包装+スケジュール)で比較してください。リスク対策としては、二国分担による分納・相見積・治具/検査票の共通化が効果的です。
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